歯科タバコ介入とトレーニング

3関連づけおよび効果的な実地簡易介入モデル

3.1 大切な関連づけの機会を逃さないために

喫煙への曝露は、口腔の健康、歯科治療の効果への影響、口腔の個々の細菌や細菌叢に影響を及ぼします。そして、身体全体への影響の共通で最大のリスク因子です。

  • 歯科受診は、こうした関連づけの機会が豊富にあることが知られていますが、様々な理由で、こうした機会は十分に生かされていません。
  • 関連づけを短時間で効果的に行う方法は、写真や画像(グラフ)で示すことです。
  • 歯科受診は、自分で自分自身の身体への影響を見せて理解(認知)する支援が即時にできる特性があります。

こうした大切な機会を逃さないために、機会別に患者との代表的な会話例やエビデンスのグラフ、症例写真のカラーパネルを利用できます。

カラーパネルの入手には、実践編e-learningの受講(無料)と修了が必須です。実践編e-learningの開講は2018年10月を予定しています。

3.2 関連づけを活かすために

歯科受診の機会をどのように活かせばよいのでしょうか。日常診療では、次のようなきっかけがあります。

①タバコ使用への簡易介入をはじめるきっかけになる。 ②禁煙の意思が低い患者への動機づけの支援に用いる。 ③喫煙をしていない患者の喫煙開始の防止に役立つ。 ④受動喫煙を避ける動機づけの支援に用いる。

3.3 関連づけの機会と内容

関連づけは、禁煙の恩恵から始めることもできます。治療効果の改善や疾病リスクの低下、治療中の病気の進行予防があります。そして、患者との信頼関係ができている場合は、経済的な恩恵の話、たとえば、「禁煙するとお金がいくら節約できるか計算してみましょうか?」と続けるのは自然なことです。1日に使う金額、1年で使う 金額、10年で節約したお金で、何が買えるかの話をしてもよいかもしれません。

関連づけの機会が生かされる診療の内容

①口臭・歯の着色 ②歯肉の着色 ③唾液、歯石、味覚の低下 ④酸素供給不足、免疫の異常 ⑤口腔がん、喫煙者口唇 ⑥白板症 喫煙者口蓋 ⑦抜歯後の創傷治癒異常、口腔インプラント治療の失敗 ⑧歯の喪失による補綴物維持効果低下、レジン充填物の着色 ⑨歯周病のリスク ⑩歯周病の治療、歯の喪失、炎症応答の異常 ⑪口唇・口蓋裂、親の喫煙と子どもの齲蝕 ⑫受動喫煙と歯周病、歯肉着色

関連づけの機会が活かされる患者

①歯周病の治療を受けられる方に ②歯を抜く手術を受ける方、抜けた歯の補綴治療を受ける方に ③喫煙は、さまざまな歯科治療と関係があります ④喫煙は、歯の根管の治療や痛みとも関係があります ⑤熟年世代・孫ができる世代の喫煙と口の健康との関係 ⑥受動喫煙(親の喫煙)と成人や子どもの口の健康との関係⑦喫煙し始めて数年の方、女性の喫煙と口の健康との関係 ⑧新しい家族が加わる方・加わった方、喫煙者のいる家庭

※それぞれの機会の代表的な会話例やグラフ・症例写真の患者提示用カラーパネル(改訂版)は、実践編e-learningの修了者が介入を開始する場合に入手できます。

図:患者提示用カラーパネル(旧版)の例
図:患者提示用カラーパネル(旧版)の例
 

3.4 効果的なWHO簡易介入実地プログラムの2つのモデル

「5A」は禁煙の準備ができている患者に行うモデルです。

「5A」禁煙の準備ができている患者 「5R」禁煙の準備ができていない患者
質問
Ask
全ての患者に喫煙状況を尋ねる 関連 どのように禁煙に関心がありますか?
助言
Advise
禁煙が必要だと助言する 危険 あなたの関心事と喫煙のリスクとで何をご存知ですか?
評価
Assist
禁煙の準備状況を評価する 恩恵 あなたの関心事で禁煙の恩恵は何でしょうか?
支援
Assist
禁煙計画を支援/禁煙外来制度の紹介 障壁 あなたの禁煙を難しくしているのは何だと思いますか?
調整
Arrange
フォローアップ/禁煙治療機関への紹介 反復 禁煙の準備状況の評価を繰り返します。もし準備ができていないなら後に介入を行います。

禁煙の準備ができていない患者は?

  1. たいていの患者は禁煙の準備ができていません。禁煙を望まず、禁煙できないと思い込んでいます。
  2. こうした場合、簡易動機づけ介入を行って、相談を終わります。この介入法を「5R」と呼んでいます。
  3. 「5R」は準備状況の評価をしてから始めます。「5R」を一旦終えると、再び準備状況を評価し、場合によっては「5A」も終えます。
図:禁煙の準備ができていない患者への「5R」の実施を行う機会を示すWHOトレーニングのフローチャート(左側の「5A」の3番目の「評価」の後で「5R」を行う。)
図:禁煙の準備ができていない患者への「5R」の実施を行う機会を示すWHOトレーニングのフローチャート
(左側の「5A」の3番目の「評価」の後で「5R」を行う。)

3.5 実地介入モデルのまとめ

「5A」の質問・助言・支援・調整の全てを行っても3~5分以内で、禁煙の支援ができます。禁煙の計画とフォローアップの計画のための5つのどのステップから開始したり、どのステップでも中止したりすることができます。

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