歯科タバコ介入とトレーニング

2歯科医療従事者の役割

2.1 はじめに

歯科で禁煙支援を行う理由は大きく2つに分けられています。

主に歯科医療

①患者と地域住民の生命と口腔の健康を思う。②最善の歯科治療の効果を願い、良好な予後を願う。③良質なプラークコントロールの継続を願う。④タバコ依存治療の地域医療の役割を担う

主にプライマリケアの役割

①地域住民への手本になる。②臨床家として禁煙介入に関わる。③地域医療の臨床教育の担当者になる。④健康多職種協働組織として産業の利益活動を警戒する。

コモン(共通)リスクファクター・アプローチと日本人死亡のリスク因子

図:歯科疾患とNCD(がん、循環器疾患、糖尿病、COPD=生活習慣病)の共通リスク要因(2011年国際連合NCDの予防および管理に関する政治宣言 第19条 歯科疾患などの主要な健康負担の共通リスクの対策は、NCD対策と同じ恩恵をもたらす。)
図:歯科疾患とNCD(がん、循環器疾患、糖尿病、COPD=生活習慣病)の共通リスク要因(2011年国際連合NCDの予防および管理に関する政治宣言 第19条 歯科疾患などの主要な健康負担の共通リスクの対策は、NCD対策と同じ恩恵をもたらす。)
図:喫煙は日本人の死亡の最大のリスク要因(厚生労働省健康日本21・参考資料スライド集より)
図:喫煙は日本人の死亡の最大のリスク要因(厚生労働省健康日本21・参考資料スライド集より)

2.2 タバコ使用と口腔の健康

喫煙と受動喫煙は口腔の健康に様々な影響を及ぼします。その影響を容易に見せて、みることができます。喫煙は歯科治療効果の低下と関係します。

図:喫煙・受動喫煙と口腔の健康および歯科治療への影響
図:喫煙・受動喫煙と口腔の健康および歯科治療への影響

喫煙の口腔細菌への影響

微生物研究法の革新により、喫煙による口腔細菌の病原性の強化や細菌叢の悪性化と禁煙による改善が、多くの研究で示されています。

図:歯周病と齲蝕原生細菌への喫煙とニコチンの影響
図:歯周病と齲蝕原生細菌への喫煙とニコチンの影響

2.3 歯科受診患者へのタバコ介入

患者の喫煙率

喫煙者は生活習慣が乱れているので、歯科を受診する患者に喫煙者は少ないかもしれません。歯科を受診する患者の喫煙状況を調べたところ、喫煙者は非喫煙者と同じ程度に歯科を受診することがわかりました。歯科受診患者の喫煙率は、国民全体の喫煙率と同じか、少し高かったからです。

禁煙支援の効果を評価

世界の歯科での禁煙支援の効果が標準的な方法で調べられました(コクランレビュー)。歯科での禁煙介入は効果的です。歯科での禁煙支援は、口腔検査とカウンセリングが含まれました。

2.4 WHOが推奨する歯科簡易タバコ介入5Aモデル

禁煙への介入は短時間でも効果があります。

会話のレベル 研究数 推定オッズ比 推定禁煙率(%)
会話なし 30 1.0 10.9
3分未満の最少のカウンセリング 19 1.3 (1.01, 1.6) 13.4 (10.9, 16.1)
低強度のカウンセリング(3-10分) 16 1.6 (1.2, 2.0) 16.0 (12.8, 19.2)
より強い強度のカウンセリング(10分以上) 55 2.3 (2.0, 2.7) 22.1 (19.4, 24.7)
出展:Fiore MC et al. Treating tobacco use and dependence: 2008 update.

日常診療の中で、3~5分程度までの時間を利用して、タバコをやめることへの助言を行ったり、相談をもちかけたりします。そして、来院毎に、無理のない範囲で、双方向性の診療コミュニケーションの流れの中で、簡便なタバコ介入を織り交ぜていきます。

簡易タバコ介入の主要な目的は、患者の支援です。喫煙のリスクと禁煙の恩恵を理解します。簡易タバコ介入では、ヘビースモーカーに地域の集中的禁煙治療を紹介します。

診療サービスが成功するかどうかの測定には、①リーチ(サービスを受ける人数)、②効果(サービスにより行動が変わった者の割合)、③コスト(一人あたり)が用いられます。簡易タバコ介入は、効果が小さくでも、日常的に広範なヘルスケアシステムで行うことで人口レベルのインパクトが見込めます。

効果的な実地モデルを用います。①禁煙の準備ができている患者には5つのA(後述)、禁煙の準備ができていない患者には5つのRの介入手順を行います。

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